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朱 華 「 はねず 」

朱華色は、黄色がかったあたたかみのある薄い赤色のことです。
『万葉集』にもその名が綴られた由緒ある伝統色で、ほかには、波泥孺、唐棣花、棠棣、翼酢(読み方は全て「はねず」です。)などの文字があてられました。
日本書紀によると、天武天皇の時代に、親王や諸王の衣装の色として定められ、3年ほどの短い期間ですが「紫色」の上に、朱華(はねず)の服が着られていた記述がみられます。
その制度を継承した持統天皇の色制でも親王の色とされており、平安時代には公卿以外の着用が禁じられた「禁色(きんじき)」のひとつでした。

私どもの製品に「朱華(はねず)」という名前をつけたのは、ディアー・カンパニー産の鹿革フルタンニンの色が「朱華色(はねずいろ)」に似ていたこと。
鹿革は古来から人が身にまとう衣類に使用され、鹿は天皇と縁の深い動物であること。
日本の伝統技術を復元した鹿革製品の製作を目指す私どもに、ゆかりのある色と感じたからです。
親王の色「朱華(はねず)」を、希少な製品にふさわしいブランドとして、こころを込めてご提供いたします。
※ブランドロゴ二ついて
「朱華(はねず)」の文字を一つに重ね合わせた実在しない漢字であり唯一無二のブランドである事をイメージしております。

自社牧場で産まれ育った鹿

ディアー・カンパニーでは、すべて自社の牧場で産まれて育った鹿の皮を使用しています。
餌や飼育にこだわることにより、野生の鹿とは別格の品質の鹿革を生産しています。革は雌雄や年齢によって特徴が違います。ご購入いただくお客様のお好みによって選ぶことが可能です。
さらに革には、個体識別番号(雌雄、屠畜日、系統、年齢)をつけられます。個体識別番号で革のトレサビリティー(追跡可能性)を確立し、信頼できる革をお使いいただけます。鹿革製品に個体識別番号をつけることができるのは、日本では「朱華(はねず)」製品のみです。
管理飼育を徹底した長崎産の鹿の革を、長崎の職人が加工、日本のブランドとして発展させていくこと。そして藍染めも、雲仙で栽培した植物を使って地元で加工することを目指して努力を重ねています。

日本の伝統技術を後世に継承したい

現在「白なめし」の鹿革を国内で製造しているのは、新敏製革所だけです。また、藍染めや草木染めを施した鹿革の製品は、国内では「朱華(はねず)」製品が初めてなります。
日本は古来、甲冑や武具、足袋などに天然の植物で染色した鹿革を用いました。この手法を復元したのが白なめしであり、白なめし革の藍染めです。しかし手間と時間と費用がかかり、大量生産に向いていません。
そんな途絶えがちな日本の技術と伝統を復活させ、商品化して後世に残したい、文化継承の役割を担いたい。それが私たちの願いです。
最近では、食べ物と同様に革製品にも、身体に安全・安心な製品が求められるようになりました。
「朱華(はねず)」製品に使用する革は、すべてエコレザー認定を取得した革です。
人間や自然環境に負荷をかけない製造、金具を外して土に埋めると自然に還るような加工を大切にしています。

朱華 - 貴鹿(HANEZU -kiroku / フルタンニン革)

タンニンは、渋柿の「渋」の成分のこと。
フルベジタブルタンニンという言葉もあるように、植物性の材料を利用したなめしは、人体にも環境にも優しい製法です。金属アレルギーを引き起こさないため、肌のデリケートな方にも安心してお使いいただけます。
牧場で飼育された鹿の革は軽くて柔らかく、しなやかに伸びて、あたたかみが感じられます。
さらにタンニン鞣革(なめしかわ)を使用しているので、革の色はお使いになるにしたがって、経年変化(けいねんへんか)で濃い色に変わります。
タンニンが酸化したり、紫外線を受けたりすることで、革の色を変化させるからです。お手入れの際にオイルを追加する場合にも、水分を吸収しやすいので、革の芯までしっかり浸透させることができます。
すべて製品は手縫いの縫製による手作りです。革の部分も商品ごとに異なります。まったく同じ製品は存在しない、あなただけの一点物です。
エコレザー認定済。

朱華 - 白(HANEZU -shiro / 白なめし革)

飼育された鹿革は、表面の繊維が細かく、発色に趣きがあります。
軽くて薄く、柔らかいけれども強靭。伝統的な技術を思わせる懐かしさに、ほっと安らぐのではないでしょうか。
白なめし革は、川の水温や水量などを監視しながら、数日間、皮を水に浸して微生物の作用によって、毛根を緩めて脱毛します。脱毛した
皮は、厚さを調整し、腐敗しないよう播磨の天然塩と菜種油を加えて足で揉みます。
天日にさらして乾燥と揉(も)みを繰り返すことで、自然の白さが醸し出され、きめが細かく強靭な革になります。天候に気遣いながら、合成・化学薬品をまったく使わずに、職人が受け継いだ根気と手仕事でつくる白なめし革は、できあがるまで3か月以上もかかります。古代の技法を今に伝える稀少で存在感のある革です。
さらに雲仙で栽培された藍を用いて藍染めを施し、手仕事で縫製しています。強度と使い勝手を考慮した新しい技法で縫製しています。伝統を復元し現代的にアレンジした貴重な製品です。
エコレザー認定済。

鹿の飼育

ディアー・カンパニー 代表取締役 八木紀子
創業1977年。獣医であった先代が始めた日本で唯一の鹿生産牧場を後継し、現在では国内最大規模となる約1,000頭の鹿を飼育。
自社の牧草地で栽培した餌を毎日与え、雲仙の天然水を飲ませ、ストレスのない放牧方式で鹿を飼育。また、鹿の品種改良を行い、個体識別番号化も開始。
鹿の素晴らしさ、有効性を広めることを使命と考え、鹿製品の研究・開発を積極的に行っている。鹿皮についても20年以上前から製品化を考え、長年の開発に携わってきた。
「朱華(はねず)」製作においては、飼育環境の充実、傷を残さない処理、鮮度を保つことが重要と考え原皮を供給。鹿革製品による伝統復活に挑んでいる。

皮鞣し(なめし)加工

新敏製革所 代表 新田真大
創業1948年。日本で唯一、鹿革白なめしの技術を持つ職人。  
白なめしに挑戦するきっかけは、伝統ある白なめし革の継承者がたったひとりきりになり、危機感を抱いたこと。そして伝統ある牛革の白なめし継承者となったが、その後、鹿革の白なめしに注目。試行錯誤した後に鹿革の白なめし技術を確立した。鹿皮の鞣しを始めて10年。白なめしは人類が最初に手掛けた皮仕事だろうと考え鹿皮に向き合い、日本の鹿皮の価値向上のために、鹿皮の白なめしを追究している。
皮にはそれぞれの個性があるが、「朱華」で使用する鹿皮は野生の鹿とは全く異なり、極めて上質な鹿皮だと語る。

縫製・組み立て

銀職庵(ぎんしょくあん) 水主(かこ) 筆頭職人 中山智介
創業2008年。皮革工芸と貴金属工芸の工房を営む。    
国内外のあらゆる皮革を常時在庫し、様々な製品を手縫いのみで生産している。独自開発の技法や素材、伝統的技法を用いた製造にこだわる。鹿革の製造は十分に経験はしていたが、「朱華(はねず)」のように「フルタンニン鞣し(なめし)」の鹿革を素材として用いることは初めてであった。一般的なクロム鞣しやコンビ鞣しではなく、フルタンニンによる鞣しは希有といえる。
「朱華(はねず)」の製品縫製においては、最高品質を維持するために新たに開発した技法も採用した。